完成車メーカーとタッグを組み、日本連合として「We Overtake Tesla」を実現する
チューリングは「We Overtake Tesla」というミッションを掲げ、完全自動運転の実現に取り組んでいます。そんなチューリングに興味をもってくださった採用候補者の方々から、よく質問されることがあります。
それが「チューリングにはどんな勝ち筋があるのか」「チューリングの競合優位性やポジショニングを知りたい」というものです。その答えをCOOの田中さんに伺いました。
強みは、AIに関するリーダーシップ、リソース、車への深い理解があること

ーーチューリングは資金調達をして、完全自動運転実現に向けて進んでいます。直近のマクロ環境には、どのような変化がありましたか?
まず、分かりやすさを重視して、すごくざっくりとした説明の仕方をしますね。これまでの自動運転技術は「数百メートル先まで認識可能ならLiDARなどの高精度のセンサーをつけて、事前に作成しておいたcm単位で周囲の情報がわかるHDマップを用い、その上でエンジニアが「この様な状況ではこう動く」とルールを定義していく「ルールベース」が主流でした。
しかし、この方法には限界があります。「あらゆる状況を事前に定義して人間がルールを記述すること」は不可能であり、そのため運転中に予期しないことが起きると柔軟な対応ができないのです。人間が運転している場合は不測の事態が起きてもその場で判断できますが、これまでのやり方では想定外のことに対処するのが非常に困難です。
一方、チューリングは3年前の創業当初から、「自動運転はもはやセンサーや地図の問題ではなく、頭脳の問題である」というスタンスを取っています。だって、人間は「目で見た情報を頭で判断して」上手に運転していますが、人間よりはるかに遠くを見ることができる精度の高いセンサーと、人間より多くの情報を持つ地図があっても自動運転のレベルが人間のそれを超えていないというのは明らかにそういうことだと思いませんか??
そこで、チューリングは運転の判断を大量の基本的に全てニューラルネットワークに任せるという手法です。カメラなどのセンサー情報を入力として、大規模なデータセットで学習した巨大なニューラルネットワークが計算・意思決定を行い、運転指示を出力するという自動運転AIの開発です。
ただ、当時我々が立てた仮説は「理論としてはわかるものの、果たして本当に実現できるのだろうか?やはり高精度のセンサーや地図は必要なのではないか?」という見方もありました。

※会社紹介資料より引用
しかし、2024年3月にTeslaがFSD(フルセルフドライビング)のバージョン12をアメリカでリリースしたことで、状況は一変しました。(FSDとは、実際に公道を走っているTesla車に搭載されている運転支援システムの名称)
FSDのバージョン11まではルールベースでコードが書かれていて、それまでも一定以上高度な運転支援システムとしてユーザーに使われてはいたのですがが、バージョン12からすべてがEnd-to-Endに変わり、しかも人間を超えるような非常に驚くべき性能を実現したのです。実際に乗ってみるとわかるのですが、高速だろうが一般道だろうがほとんどどんなシーンでも人間の介入を必要としないレベルに仕上がっています。
この出来事は自動運転の開発に取り組む人や自動車業界にとってそれなりに大きな衝撃を与えることになりました。例えば中国では、官民・大手・スタートアップを問わず、多くの企業がヒト・モノ・カネを集めてTeslaを猛追しています。
欧州の動きとしては、イギリスのロンドンにある「Wayve(ウェイブ)」というスタートアップが、ソフトバンクグループ主導のもと、米マイクロソフトやNVIDIAから約1500億円の資金を調達しています。Wayveはチューリングよりも創業が早く、彼らもEnd-to-Endや生成AIを活用した自動運転の開発を進めていました。
このように、自動車産業における地政学上の重要な地域である欧州・中国・アメリカで、代表的なプレーヤーが出てきている状況です。
ーー日本は自動車産業において地政学的にはどの様な特徴を持つ国なのでしょうか?
地政学的観点では、日本も非常に重要な国です。世界一自動車を販売しているのはトヨタ自動車であり、Hondaや日産など名だたる世界的な自動車メーカーが存在しています。
ただ、End-to-Endの自動運転を手がける企業という視点では、日本にはプレイヤーが少ないです。だからこそ、創業当時からAIにフォーカスしてEnd-to-Endの自動運転に取り組んできたチューリングがいま、脚光を浴びています。
「大手自動車会社が本気で取り組んだら、End-to-Endの自動運転も実現できるのでは」と思われるかもしれません。しかし、AIによる自動運転は、資本力がある大手企業だからといって実現できるわけではなく、先進的で探索的な領域であるからこそ、特異なリーダーシップと実現するための開発組織が必要なのです。
現在、完成車メーカーの中でEnd-to-Endの自動運転を実装できているのは、Teslaと一部の中国の企業だけです。なぜなら、彼らは経営トップがAIの重要性を心から理解した上で経営方針を立て、人やお金を集中させているからです。
ーーチューリングの立ち位置について教えてください。
チューリングは今とても面白いポジションにいると思っています。創業者の山本さんは将棋AI「Ponanza」で名人を倒した実績を持っていますが、国内外を問わず、AIの大規模学習によってこれほど大きな成果を上げたエンジニアはかなり珍しい存在であると言えると思います。
また、我々チューリングは今年の初頭まで自動運転AIの開発だけでなく、車両の製造も手がけようと事業や開発を進めていました。そのため、純粋なAI企業よりも、自動車産業や車両の構造、保安基準の難しさ等について手触り感を持って理解はしていると思っています。
総合すると、チューリングの特徴はAIに関する強力なリーダーシップ、開発組織、車に対する理解を有していることです。最先端のAI開発に関する知見を有しながら、車両やハードについても一定以上の理解を持つ組織というのはなかなか珍しいのではないかと思います。
End-to-Endの自動運転を実現するためのレシピを共有し、完成車メーカーと協働する

ーー今後チューリングはどんな事業展開をしていく予定ですか?
チューリングはAIにフルベッドした自動運転を実現しようとしています。そのためには、データ収集、データをどうAIに学習させるか、収集データからどのようなデータを引っ張り出して再構成していくかという「MLOps」をどう回していくかが重要です。
(MLOpsとは、機械学習モデルをビジネスに適用するための開発・分析・運用を効率化する手法のことです)
今、私たちは人間の運転手による介入無しで東京を30分自動運転するという「Tokyo30」というプロジェクトに取り組んでいます。このプロジェクトを通じて、私たちが定義したカメラの位置、車の形に合わせて、まずはTeslaのFSDに匹敵するEnd-to-Endの自動運転を実現しています。料理で例えるなら「レシピ」です。
どんな材料を集めて、どんな形に切って、どんな調味料を加えるのか。レシピをまずは作り上げて自動運転を実現できた先は、各完成車メーカーと協働して、MLOpsを動かしていきたいと考えています。
自動車会社にはさまざまな車種やモデルがあります。そのモデルごとにチューリングの自動運転AIを搭載していくには、センサーカメラをつける位置や制御方法を考えていく必要があります。もちろん、すべてをスクラッチで行うのではなく、共通化できる部分とカスタマイズしていく部分に分かれます。
End-to-Endの自動運転を実現するためのレシピを共有しながら、完成車メーカーと同じ方向を向いて、自動運転AIを車に搭載していく形を考えていく。その様なことを検討・協議しています。
補完関係を築ける完成車メーカーとタッグを組み、「We Overtake Tesla」の実現へ

ーーここ半年でチューリングの事業は大きく変化しています。その変化を田中さんはどう捉えていますか?
End-to-Endの自動運転に関する世の中の注目が高まることに関連して、チューリングにも自動車業界の様々なプレイヤーが関心を寄せていただけるようになりました。
一方で世界的に見れば、Teslaや中国の様々なプレイヤーと比べての優位性があると言える状況ではありません。ただ、私たちのもっている開発組織やリーダーシップ、既に実現している技術は、伝統的な完成車メーカーでは非常に実現しにくいものであるというのもまた事実です。
ただ、チューリングがいくらEnd-to-End自動運転への知見があるとはいえ、我々には自動車を製造する力はありません。つまり、チューリングは自動車業界の様々なプレイヤーと明確な補完関係が築けると考えています。
ーー「We Overtake Tesla」への筋道は見えてきていますか?
現時点での道筋としては、完成車メーカーとタッグを組んで日本連合として「We Overtake Tesla」を目指していきたいと考えています。
前提として、TeslaはEVの完成車メーカーとしてはもちろん、AI自動運転においても最先端の企業でリスペクトする企業です。私たちはまず先頭プレイヤーであるTeslaをはじめとした企業がやってきたことを忠実に追いかけて再現していく段階です。
先頭集団を追いかけるメリットは「セカンドムーバーアドバンテージ」です。先頭集団を追いかける方が、同じことを実現するまでに時間やコストがかからないのです。もちろん、先頭集団についていける開発組織を作ること自体、どの会社にでもできることではありません。それを実現できることがチューリングの強みなので、やり続けていくことが重要です。
ただし、追いかけているだけではいつまでも追い越せません。自動車大国の日本の地の利を生かして、多くの完成車メーカーとタッグを組み、公道を走る車に自動運転AIを載せて走行データを取得することで、自動運転AIの精度を上げていく。そのサイクルをいかに回していけるかが勝負どころです。
ーー改めて、田中さんが思うチューリングの良さ、今チューリングに加わる面白さを教えてください
自動運転における世界の状況は様変わりしつつあります。日本において、End-to-Endでの自動運転に取り組んできたプレイヤーがほとんどいないからこそ、創業当初から取り組んできたチューリングは、さまざまな声がけをいただいています。
創業当初から私達なりの仮説を信じて霧の中を進んでいたという状態から、目指す山の輪郭が見えてきたような感覚です。マイルストーンが見えてきて地盤が固まりつつあるので、より高い目標を追いかけられる状況で働けることが、今のチューリングに加わる面白さです。
HR立石の編集後記vol.35
マクロ環境とチューリングの事業戦略の関係から、地政学的にみたチューリングの面白さなど幅広い視点で聞けました。チューリングの事業は日本でやるからこそより強い意味があるものなのかもしれないと感じたインタビューでした。
ライター:久保
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